降伏の記録

『降伏の記録』
植本一子 
河出書房新社

『かなわない』(タバブックス)で衝撃をうけた写真家 植本一子さんが綴る日々の記録。
何が衝撃というと、自分の弱さも闇もなにもかも赤裸々に綴ってあったこと。夫以外の好きな人のことや、うまく子育てができない日常の出来事や心情までも。今回の『降伏の記録』ではさらにECDの闘病により、夫と向き合う内面が色濃い。

自分にも重なる部分があり、ぞっとすることもあったが食い入るように読んだ。強いだけの人はいない。母親だって人間だ。ただ本当のことを、それが自分や周りも傷つけることだとしても隠すことなく全て吐露する彼女には、凄味さえ感じる。それが全て自分なのだ、と一子さんは言っている。分かってほしい、と。
家族は時にめんどくさい、と思うことも多い。
本当の愛って何だろうと考えても答えは出ない。ずっと悩んで、ぶつかりながら大人になるしかない。
一子さんなりにぶつかって考えて、自分という人間をさらけ出した日々の記録。
そんな辛く悩ましい生活の端々にも、暖かさがあるように私は感じた。闇をまっすぐ書くから、ホッとする場面がより鮮やかなのかもしれない。

植本一子さんも本書で言っているように、重要な他者による人生への影響は大きい。私も決して健やかとは言えない家庭に育ったけれど、うちにはよくお客さんが来ていた。家の中が険悪になると、救世主のように来てくれるその家族の存在はかなり救いだった。
しかも家の隣に母の友達が住んでいるといった珍しい環境で、母が仕事のとき、家庭が荒れている時には預けられていた。とても可愛がってくれて、わたしは安心することができたのだと思う。そういった開かれた家庭環境がこれからは必要になると思う。重要な他者である両親の価値観や夫婦関係だけが全てではないと知ること。
あわせて一子さんの夫でラッパーのECDの本も次の記事で紹介します。

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